日本学術会議による

声明「日本学術会議会員任命問題の解決を求めます」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-25-s182-1.pdf

日本学術会議会員の任命拒否に関する声明

      

                                           新潟県の学者・研究者有志        2021年1月8日

                                              共同代表:崎尾均(新潟大学) 佐々木寛(新潟国際情報大学)

         

 日本学術会議の新規会員の任命にあたり、日本学術会議から推薦された105名のうち6名の任命を菅内閣総理大臣が拒否したことは、全国の大学・研究機関における学問の自由に波及する重大な問題であると考えます。国際学術会議のダヤ・レディ会長は「菅義偉首相による任命拒否が学問の自由に与える影響を深刻にとらえている。科学者の表現の自由が保障され、会員推薦の際に学術上の選択の自由が守られるよう強く支援する」と述べています。

学問の目的は、真理の探求および人類の福祉・平和です。学術活動においては、人知を広げ、その成果が人類のよりよい生活と平和に寄与することを大切にしなければなりません。また、学術活動は、個人の研究で完結するものではなく、様々な分野の研究者の協働によって成果を社会に還元します。

かつて、科学者は軍事研究に加担した苦い歴史があります。良心的な研究者にあっても沈黙を守ることで戦争に協力しました。このような歴史の教訓に学び、1949年に日本学術会議が創設され、1950年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を発表しています。不幸な歴史を繰り返さないためには、公的な機関でありながら、時々の政府から独立して学術成果に基づいた活動をすることは極めて重要な意味を持っています。

日本学術会議は、社会の困難な問題を政府の意向から独立して学問的見地から検討する組織です。政府に勧告、答申、提言などを出す機能をもち、それを通じて社会に貢献することを目的としています。日本学術会議が、公的な仕組みのなかで自由な状態ですべての学術分野をカバーし、公平にアカデミーを代表する機関であってこそ、市民社会に資することが可能となります。

 菅内閣総理大臣の任命拒否は、学術会議法を踏みにじるもので、法治国家としての日本の否定です。このようなやり方での学問の自由への介入が許されるとしたら、憲法で保障された市民の精神的自由権、すなわち、思想・良心の自由、信教の自由、言論・表現の自由も危機にさらされることにもなるでしょう。

 私たちは、新潟県の大学や研究機関などで学術研究に従事する者として、菅内閣総理大臣に対して、今回の日本学術会議会員の任命拒否の理由を明確にするとともに、日本学術会議の推薦に基づき6名の会員を任命し、速やかに事態を解決することを求めます。

政府の日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める声明

 

・菅内閣は、令和2年10月1日付で交代する第25期日本学術会議会員105人の委員のうち、6名の任命を拒否した。委員の任命拒否は、任命制度が導入された1983年以後、初めてである。

・加藤官房長官は10月5日の記者会見でその理由を問われ「専門領域での業績にのみにとらわれない広い視野で判断、総合的、俯瞰的観点に立って判断」と回答し、具体的な理由を明らかにしなかった。会員の資格は「すぐれた研究または業績がある科学者」(学術会議法:以下法17条)という法定の基準だけでなく新たにあいまいな基準を示した。この基準は、恣意的で法を著しく逸脱した運用であり、到底容認できない。

・菅総理も同日の記者会見で、自らが主体的に任命の除外に関わったことを示唆した上で、「学術会議は政府の機関であり、年間10億円の予算を使って活動、任命される会員は公務員、会員は後任を指名が可能、任命する責任は首相にある」と述べた。明言はしていないものの、学術会議は行政機関であり、国から10億円も出しており、身分は公務員、任命権者は首相だから、政府のいうことを聞くのが当然と言いたかったものと推察される。菅首相は、全く法の趣旨と学問研究の本質を理解していないと言わざるを得ない。

・会員の構成が1983年に学協会の推薦制になってから、会員は学術会議の「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」と規定された(法第7条2項)。この時、国会審議における政府答弁として、「任命は形式的なものであり、推薦を拒否しない」ことが前提とされた。今回の任命拒否は、過去の政府答弁を覆すものであり、人事を通じて組織を支配する菅政権の強権的な手法を示しており、「(政府から)独立して職務を行う」(法第3条)機関に対する不当な介入であり、断じて容認できない。

・今回任命拒否された委員は、政策に批判的な意見を表明してきたとされるが、忖度のハードルを上げて世論を沈黙させることが政権のねらいである。科学者、国民は、自己規制し決して沈黙してはならない。

・また、本件を奇貨として、政府・自民党は年内に学術会議の組織や役割の見直しを提言すると報道されている。政権にとって不都合な事案を強引に消し去る手法は、安倍政権とそれを継承する菅政権の常とう手段として警戒しなければならない。学術会議のあり方と今回の任命拒否問題をすり替えることは許されない。

・現在の学術会議の組織や運営に改善の余地があるものの、政府による数次の組織改編や位置付けの変更の中で、学術会議が1949年の設立以来「わが国の科学者の代表機関として」(法第2条)果たしてきた役割は大きい。学術会議が「独立した組織」(法第3条)として断固として学問の自由を守り、法に託された役割を果たすことを強く願う。

・政府は6名の任命拒否の合理的な理由を説明すること、並びに、学術会議の推薦に基づいて105人の委員を速やかに任命し違法状態(法第7条1項)を解消することを強く要望する。

                         2020年10月10日

                         日本科学者会議埼玉支部幹事会

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