菅政権は学術会議会員6名の任命拒否を撤回し、直ちに任命せよ
呼びかけ人
藤田昌士(教育学) 北村 実(哲学・社会思想史) 石塚正英(技術倫理)
杉田明宏(心理学) 安田 尚(社会学) 石井博行(数学)
2020年12月28日
われわれは、埼玉県に在住する学者・研究者のグループです。2020年10月1日、学術会議が推薦した会員候補105名のうち6名が、菅政権によって任命拒否されたことが明らかとなりました。これは「学問の自由」ひいては「思想・良心の自由」を侵害する行為であり、学術会議のみならず国民全体に対する攻撃です。この暴挙に対して、実に多くの学会等諸団体が抗議の声を上げました。それは今や1,341(2020年12月22日現在)に達しました。
菅政権はこれに対して、「総合的・俯瞰的観点」「多様性」等々、その場しのぎ、取って付けたような言い訳を重ねるばかりで、「説明責任」を放棄しています。その上、以前は「概ね良好の評価」をしていたにも関わらず、今や前言をひるがえし「学術会議改革」なる「組織改変」「下請け機関化」の新たな暴挙に出ようとしています。われわれは、こうした菅政権による争点ずらし、論点そらしの奸計(悪だくみ)に乗ぜられることなく、「事の本質」を広く訴えようとするものです。
この抗議声明に対する多くの皆さんの賛同署名を募ります。
声明文
菅政権は、日本の科学者を内外に代表する機関である日本学術会議(以下、学術会議と表記)が、新会員候補として推薦した105名のうち6名の任命を拒否しました。これは「日本学術会議法」(以下、日学法と表記)に違反する許しがたい暴挙です。
1949年設立の学術会議の日学法第二条では、「学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。」とされています。これを達成するため、学術会議の職務と権限を以下のように規定しています。
第三条では「学術会議は、独立して左の職務を行う」と職務の独立性を規定しており、第四条では「政府は左の事項について、学術会議に諮問することができる」と規定され、第五条では「学術会議は、左の事項について政府に勧告できる。」と定めています。
学術会議は政府に提言・勧告する機関であることから、政府から独立した機関でなければならず、それを保証するために以下の事が規定されています。
第七条で「会員は第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」とし、第十七条では「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績のある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」、としています。すなわち、学術会議は「内閣総理大臣の所管」下にあるとは言え、会員は学術会議の「推薦に元づいて」任命されるものと規定されており、内閣総理大臣による専権事項とはされておりません。ここにある「基づいて」は、学術会議が提出した推薦名簿にプライオリティ(優先権)のあることを示すものです。つまり、菅首相には学術会議会員の人事選考権はないのです。
10月7日の記者会見で加藤勝信官房長官は憲法15条を持ち出し、「任命権者たる首相が推薦通りに任命しなければならないというわけではない」と述べました。しかし、憲法73条4号は、「内閣は、法律の定める基準に従い、官吏に関する掌理をする」定めており、首相が公務員を恣意的に任命することは許されておりません。ここにある別法こそ「学術会議法」第十七条であり、この法律の定める基準が「優れた研究または業績」に他なりません。
以上の事から、学術会議が責任をもって推薦した6名の候補者の任命を拒否したことは明らかな違法行為です。日学法第七条の法定会員数(半期)百五名を速やかに充足し違法状態を脱すべく、推薦された6名を推薦に「基づいて」直ちに任命することを求めます。
菅政権による「二重の違法行為」を許すな!!!
学術会議会員任命拒否を考える埼玉県・学者研究者の会
連絡先:石井博行